再興10周年 念願の狂言上演
農村舞台寶榮座で新作狂言「中馬の狸鬼」 2026.10.9
やまかわさん作の新作狂言「中馬の」の一場面。寶榮座のもつ雰囲気は、狂言にも合っていると感じた。
再興から10周年を迎えた豊田市足助地区町の「農村舞台 寶榮座(ほうえいざ)」で先月26日、周年企画の目玉である新作狂言の上演が行われた。あいにくの雨だったが足助地区を中心に市内外から約60人が訪れ、狂言の親しみ方も学び楽しんでいた。
寶榮座は地元の氏神である諏訪神社境内に明治時代に建てられた農村舞台。かつて地芝居が盛んな地域であったと一目でわかる立派な建物だ。大正時代の大改修で廻り舞台装置も設置され、これは現在も使用できる。
昭和時代には林業の衰退や少子高齢化によって地域の人口が減少。平成2年の歌舞伎公演を最後に寶榮座は活用されなくなり、地元での維持管理も難しくなった。
この寶榮座をなんとかして存続させようと、地元の怒田沢自治会から萩野自治区に管理移管の願いが出されたのは平成28年。自治区長の青木信行さんは豊かな自然と芸術を融合する「芸術文化村」構想を発案し、有志に呼びかけて翌29年「農村舞台寶榮座協議会」を設立した。これが今から10年前だ。
協議会の目的は寶榮座の単な保存でなく、築120年の歴史ある寶榮座を地域資源として活用し、芸術文化の交流人口で活気を生み出すことだった。積極的な活用を呼び掛けて寶榮座は映画上映会、仏教講座、寄席、コンサート等にも使われるようになり、芸術文化村構想の歯車は上手く回り始めているように感じる。
今回の狂言上演は協議会長の青木さんが念願にしていたものだ。知人を通して能楽作家のやまかわさとみ(山川里海)さんと出会い、2年をかけて準備してきたという。
やまかわさんが手掛けた新作狂言「中馬の狸鬼(たぬき)」のあらすじは、中馬(塩運び)が巴川の河原で休んでいると、鬼が現れて万病に効く薬をよこせとおどし、中馬はたまげたものの狸が化けた鬼と見破って…というもの。演じたのは能楽師狂言方(和泉流)のプロだ。台詞は聞き取りにくくても、やまかわさんの事前説明や解りやすいストーリーもあって観客は見入っていた。終演後には能楽器の体験会もあり、観客も能楽師も楽しそうに盛り上がっていた。 【新見克也】